蚊に刺された痒みの正しい対処法はたったの3つ!【看護師が徹底解説】

      2016/09/04

 

蚊に刺された時の耐えられない痒み。思わず掻きむしって悪化させたことはありませんか?

  • 冷やすか温める
  • 痒みの度合いに応じた薬を塗る
  • 掻かないように保護する

この3ステップが医学的に正しい対処法です。

いわゆる民間療法のような様々な方法は、ほとんどが根拠のない思い込みです。

 

それでは、蚊に刺されたところが痒くなる仕組みと正しい対処法を詳しく見ていきましょう。

 

蚊に刺されて痒くなるメカニズム

実は、蚊の唾液には痒みを感じさせる成分が含まれているわけではありません。

蚊に刺されて痒くなるのは、人間に備わっている防御機能である免疫反応(アレルギー反応)によるものです。

蚊の唾液には、消化酵素や刺されたことに気づかれないようにする麻酔作用、蚊の口(細いストロー)の中で血が固まらないようにする作用(抗凝固作用)などの成分が含まれています。

しかし、このような蚊の唾液の成分には関係なく、人間にとって蚊の唾液は「異物」です。

免疫細胞が蚊の唾液を人体に有害な物質だと認識して、すぐさま「異物」を排除するシステムが働きます。とても頼もしい防衛軍の出動ですね。

免疫のしくみ

出典:自然治癒力「私たちを守る免疫のしくみ」

 

免疫細胞は血液に運ばれて、蚊に刺された部位に続々と集まってきます。これが、赤くポコッと腫れて血流がよくなっている状態です。蚊に刺された所の周囲の細胞が、免疫細胞をどんどん呼び寄せる指令を出します。

その指令となるのが「ヒスタミン」というホルモンのような物質です。

ヒスタミン

出典:健康+生活「かゆい蕁麻疹の対処法4ステップ!原因からみる治療と薬とは」

 

この「ヒスタミン」が痒みを引き起こす直接の原因です。蚊の唾液に「ヒスタミン」が含まれているような記述をよく見かけますが、それは間違いです。

 

痒みの2つのアレルギー反応と5つのタイプ    

蚊の唾液=「異物」を排除する免疫反応は、初めて蚊に刺されて「異物」(抗原)が体内に侵入したときに、次回から抗原をやっつけるための「抗体」を作って戦う準備をします。

この「抗体」は、2度目「異物」が侵入して初めてアレルギー反応を起こして対抗します。

つまり、初めて蚊に刺されたときは、まだ「異物」を特定して防衛軍を組織しただけで、実際には戦っていません。ですから、初めて蚊に刺された時はアレルギー反応が起きないので、痒くならないのです。

このアレルギー反応には、蚊に刺されて15分以内に出現する「即時型アレルギー反応」と数時間~数日後に出現する「遅延型アレルギー反応」の2種類があります。

2つのアレルギー反応の強さには個人差があって、蚊に刺された回数や年齢によっても、変化します。

アレルギー表

 

蚊に刺されたときの薬の正しい使い方

蚊に刺された痒みを止めるには、2種類の薬があります。

即時型アレルギー反応

即時型アレルギー反応による痒みは、蚊に刺されてから15分以内に感じ始めて、数時間で消えるのが一般的です。根性で我慢すると、何もしなくてもじきに痒くなくなります。

この痒みには、一般的に「痒み止め」と呼ばれる「抗ヒスタミン剤」が有効です。その名の通り痒みのモトの「ヒスタミン」に対抗してくれるからです。

遅延型アレルギー反応

遅延型アレルギー反応による痒みは長く続く炎症なので、なかなかよくなりません。「ステロイド剤」を使って炎症を抑える必要があります。

搔き傷からばい菌が入ったときや、水泡が破れて細菌感染すると、化膿してどんどん悪化していきます。このような場合には、抗菌剤(化膿止め)の薬も必要になってきます。

 

即時型アレルギー反応に続いて遅延型アレルギー反応が起こる場合には、最初から「ステロイド剤」を使った方がよいでしょう。または、「抗ヒスタミン剤」と両方を使ってもかまいません。

そうすると、痒みを止めると同時に遅延型アレルギー反応を予防・軽減する効果があります。

「ステロイド剤」は副作用があって怖いと考える方がいらっしゃいますか?

安心してください。局所(皮膚の一部分)に数日間塗ったくらいでは、全身への影響はほとんどないので大丈夫です。

また、市販の塗り薬を購入する際は、薬剤師に相談しましょう。

あなたがご自分で選ぶ場合には、含有成分をチェックしてください。

炎症を抑える「ステロイド剤」は、「デキサメタゾン酢酸エステル」と表示されています。

痒みを止める「抗ヒスタミン剤」は、「ジフェンヒドラミン」と表示されています。

同じ名前の製品ラインでも、「抗ヒスタミン剤」の単独成分(単剤)のものと、「ステロイド剤」も配合された複合成分のものがあります。

「ステロイド剤」のみの薬は、虫刺されに限らず皮膚炎に広く使われる薬なので、強さのレベルが段階的に分かれています。そして「ステロイド剤」は、ケロイドなどの傷跡の治療にも使われています。蚊に刺された跡が色素沈着して残ってしまうのも、強力に予防できます。

通常は、市販薬よりも病院の処方薬の方が、有効成分の含有量が多く効果は高くなっています。特に炎症が強い痒みのタイプの方は、処方薬を常備しておくことをおすすめします。

一度、蚊に刺されたときに皮膚科か内科、小児科などを受診して、塗り薬を処方してもらいましょう。「虫刺症」や「皮膚炎」という病名で健康保険の適応になります。

 

痒みを止める都市伝説の嘘・ホント!?

蚊に刺された痒みを止める方法は、検索すると実にさまざまな方法が出てきました。外国の文献から引用したものも多いようです。

  • 洗う:水、お湯、石鹸

蚊に刺された部位を洗うことに害はないと思いますが、水は「冷やす」お湯は「温める」と考えた方がいいかもしれません。

石鹸は、アルカリ性で「中和」するという発想のようです。これは、蟻に蟻酸というものがあって、昔は蚊にも同じようなものがあると誤解されていた時代の名残と思われます。

  • 消毒する

これは、絶対にしてはいけません。

消毒薬は、ばい菌だけでなく人間の皮膚や組織も損傷させるからです。

昔は、傷の消毒は当たり前の時代がありましたが、現代ではその有害性が広く知られているので、蚊に刺された場合だけでなく、傷の消毒も一切必要ありません。

  • 冷やす:氷、保冷材

遅延型アレルギー反応の慢性期(炎症がおさまっている時期)以外は、痒みを止めるのに有効です。

  • 温める:熱いお風呂、熱いおしぼり、熱したスプーンを当てる

遅延型アレルギー反応の急性期(炎症が強い期間)は、温めてはいけませんが、それ以外の場合には痒みを緩和するのに有効です。

ただし、熱したスプーンを当てるのはヤケドの危険性があるので注意が必要です。

それよりも、蒸しタオルなどで広範囲に温めた方が効果的ではないでしょうか。温める効果は、血行を良くして反応を早くさせ異物の排泄も促すことです。

蚊の唾液の酵素活性を失わせるなどという理由がもっともらしく書かれているものを見かけますが、仮に何らかの酵素が失活したとしても、人体にとっての異物(抗原)である唾液そのものは残っているので、アレルギー反応は当然起こってきます。

  • テープを貼る(空気を遮断)

蜂などに刺された時には、皮膚に刺さっている針を取り除くためにテープなどを利用することはありますが、蜂と蚊を混同しているのでしょうか?

蚊の唾液が注入された皮膚の内側には、もともと空気はありません。刺された穴もすぐに閉じてしまいます。

  • 爪で跡をつける

痒みとは異なる痛覚刺激を与えることで、一瞬気を紛らわせる効果はあるのかもしれません。ただし、やり過ぎると「搔く」動作と同じになってしまいますね。

  • 薬を塗る、貼る

塗り薬や、貼る薬の利用は痒みを止めるのに効果があります。

  • 湿布薬を貼る

湿布薬は、使用感の温・冷に関係なく薬の作用で血行を良くして痛みを和らげます。血行を促進することは、痒みに対して温めることと同じ効果です。

経皮鎮痛薬が含まれていますが、痒みを和らげる作用があるかどうかはわかりません。

  • 指で押さえる(圧迫)

圧迫が痒みを抑えるのにどのような作用を及ぼすのか、よくわかりません。抑えることで、気が紛れるのでしょうか?

  • 何かを塗る:酢類、オートミール、肉の柔軟剤、蜂蜜、重曹、アスピリンペースト、炭酸水、バナナの皮の内側、歯磨きペースト、アロエ、バジルの葉、西洋オオバコ、塩、メンソールのリップクリーム、ティーバッグ、精油

「塗る」という発想には、それぞれの成分に「痒みを止める」「アルカリ性で中和」「刺激を加えて気を紛らわす」というような期待があるようです。

 

「中和」については、蚊の唾液は酸性であるという根拠が見当たりません。先にも書いたように「蟻酸」と混同されているのではないでしょうか。ちなみに、人間の唾液はアルカリ性です。人間の皮膚は弱酸性ですが、石鹸で中和なんてされるのでしょうか?

そして、蚊の唾液のPHや成分に関係なく、唾液そのものが「異物(抗原)」としてアレルギー反応を起こします。

精油は、専門知識がなければ迂闊には使えません。直接皮膚に塗ってよいとされているのはラベンダーオイルだけですし、よほど純度の高い安全な製品でなければなりません。

精油以外のものの成分が、どの程度痒みを止める効果があるのかは、よくわかっていません。

殺菌作用が痒みを止めるという理由で酢なども使われるようですが、そもそも殺菌作用がなぜ痒みを止めるのでしょう。殺菌とは、細菌を殺すことです。蚊の唾液は細菌ではありませんし、殺されもしません。

消毒は、本当に必要な場合以外は安易に行うべきではありません。

 

余談ですが、「殺菌」や「除菌」という言葉は、「消毒」や「滅菌」のように法律で定義・規制されていないために、その実態はとても曖昧です。

100万個の細菌がたった1個死んだだけでも「除菌」「殺菌」したといえるのです。具体的に菌を何%殺すのか、取り除くのかという根拠のある表示がなければ、まったく意味のないものです。

 

蚊に刺されたら、冷やすの?温めるの?

アレルギー反応の種類によって、対応が違います。

 

即時型アレルギー反応の場合は、どちらでもいいです。

蚊に刺されたときの状況で、可能な方法を試してみましょう。

即時型アレルギー反応の場合は、冷やすと血管が収縮して血流が悪くなり、アレルギー反応を遅らせて痒みのモトの「ヒスタミン」の分泌を抑制します。しかし、冷やすのをやめるとアレルギー反応が再開するので徐々に痒みは出てくるでしょう。でも、そのころには気が紛れているので、痒みを感じないで済むかもしれません。

キャンプなど屋外で過ごす環境では、氷や保冷材など用意できない場合があります。

このようなときには、肌に貼る冷却材が便利です。清涼感を感じる成分も含まれているので、痒みを紛らわせてくれるでしょう。

ただし、搔き傷などがある場合には、傷にしみて刺激になるので好ましくありません。傷を、ガーゼ付き絆創膏などで保護した上から貼ることは可能です。

温泉の露天風呂などで知らずに蚊に刺された場合には、温熱作用でアレルギー反応が促進されると同時に、血行が良くなって分泌されたヒスタミンの排泄も進むので、ほとんど痒みを感じずに済むことが多いようです。

可能であれば、熱いおしぼりなどで温湿布をするのも有効でしょう。

 

遅延型アレルギー反応の場合は、赤く腫れているときや熱を持っている炎症の急性期の間は温めてはいけません。炎症がひどくなります。強い炎症を抑えるためには、冷やすことが必要です。あるいは、薬を塗って常温のままでもよいでしょう。

2~3日経過して、赤みがややくすんで熱が引いたら、積極的に温めた方が痒みもおさまり早く治ります。

逆にこのときにもまだ冷やし続けていると、治りが遅くなり痒みが長引く、しこりが残る、色素沈着などを起こす場合があります。

時期によって対応が異なるので、注意が必要です。

 

蚊に刺されて病院を受診する目安

蚊に刺されて痒くなる現象は、アレルギー反応です。

これと似たような言葉に「蚊アレルギー」がありますが、同じ意味ではありません。

刺された所だけに症状が限局している場合は、局所のアレルギー反応です。

一方、「蚊」に対するアレルギー体質の人は、熱が出るなど全身的に具合が悪くなることがあります。重篤な場合は、命にかかわることもあります。蕎麦アレルギーなどと同じ反応の種類です。

「蚊アレルギー」の場合は、迷わず病院を受診しましょう。

蚊に刺されたところが、手のひらほどに大きく赤く腫れているときや、腫れの中に硬いしこりや水泡があって熱を持っているような場合には、病院を受診しましょう。

強い炎症や刺された箇所が異常に多い場合など、症状に応じて外用薬(塗り薬)だけでなく内服薬(飲み薬)が必要なこともあります。

 

【まとめ】

蚊に刺されて痒いときにもっとも重要なことは、「絶対に搔かない」ことです。

搔いた刺激で痒みが増強するだけでなく、搔き傷を作ることはできるだけ避けましょう。ガーゼ付き絆創膏で保護することは、直接掻きむしることを防止できます。

また、衣類などがこすれると痒みを誘発するので、蚊に刺された部分を保護して安静に保つことは、搔き傷防止だけでなく痒みの予防や軽減にも有効です。

水かお湯で洗うという行為は、「冷やす」または「温める」と考えるとよいでしょう。皮膚の内側に注入された蚊の唾液が、皮膚の表面を洗い流すことで何か影響を受けるとは考えにくいからです。

  • 冷やすか温める

・即時型アレルギー反応はどちらでもよい

・遅延型アレルギー反応で炎症の急性期は冷やすか常温、急性期が過ぎたら温める

  • 痒みに応じて薬を塗る
  • 刺された所を保護する

この3つが基本です。

あなたが「これは効く!」と強く信じていることがあれば、きっと効果があるでしょう。自分にはこの方法が合っている、というものがあれば大事にしてください。

 

蚊に刺されないことが先決問題ですが、まったく蚊に刺されない環境は、なかなかありませんね。

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