鼻血の正しい止め方!子供も大人もこれで安心【看護師が詳しく図解】
2018/02/28

突然の鼻血に、本人もまわりの人も大あわて!
とりあえず鼻にティッシュを詰め込んで上を向いたけれど、ぜんぜん止まらない。
ところが、それで鼻血が止まらないのは当たり前。
鼻血の正しい止め方は、まず落ち着いてから下を向いて鼻血が流れ出ないようにしっかりと鼻をつまむことです。
通常は5~10分程度で鼻血は止まります。
確実に鼻血を止める簡単3ステップ
鼻血は、子供から大人まで誰でも経験したことがあるでしょう。鼻血の90%は特に問題がないとされています。あわてずに正しく対処すると、鼻血は簡単に止めることができます。
- まず落ち着く
- 体を起こして下を向く
- 鼻をしっかりつまんで15分間そのままでいる
- *鼻血はなるべく飲み込まない
とてもシンプルですね。でも、これで大丈夫!
では次に、鼻血が止まらないどころか、どんどん鼻血を出し続けてしまう間違った止め方をご紹介しましょう。
鼻血の対処でよくある間違い1-上を向く
↑これはNG!
血が止まる仕組みは、血小板と凝固因子が血管の傷に集まって血餅(けっぺい:かさぶたのようなもの)を作り血管の穴をふさぐことです。血液が流れ続けていると、血小板などが血管の傷に留まることができず、かさぶたを作れないので血は止まりにくくなります。
上を向くと、いくら鼻を強くつまんでも鼻血は止まりません。鼻血は喉の方へずっと流れ続けています。これは、鼻を押さえずに鼻血をダラダラと出しっぱなしにしているのと同じことなのです。
同じ理由で、仰向けに寝かせることもよくありません。赤ちゃんの場合は、膝に抱っこして背中を支えながら姿勢をキープしましょう。
出典:とある研修医の雑記帳
鼻血の対でよくある間違い2-鼻骨を押さえる
鼻血がなかなか止まらない一番の原因は、鼻をつまむ場所が間違っていることです。
いわゆる「鼻の付け根」の鼻骨(びこつ)という部分をつまんでも、そこは骨なので固いところです。鼻の穴は開いたままなので、流れ出る鼻血を止めることはできませんね。
「ちゃんと下を向いて鼻をつまんでいるのに、ぜんぜん鼻血がとまらない!」と焦っているときは、ほとんどがつまむ場所を間違えています。
↑鼻の穴がふさがっていないのでNG!
鼻血の対処でよくある間違い3-ティッシュペーパーを詰める
鼻血を止めるのにティッシュペーパーを使うのが好ましくない理由は2つあります。
- 紙が血を吸い続けてやがてはあふれてくる
- 血が止まって乾燥すると外す時に粘膜が一緒にはがれてまた鼻血が出てしまう
身近にあるティッシュペーパーは、つい手軽に使いたくなります。鼻血を拭き取る場合は問題ないのですが、鼻に詰めることはやめた方がよいでしょう。
鼻血の対処でよくある間違い4-寝かせる
鼻血の正しい止め方は、上半身を起こした状態で下を向くことが基本です。
寝ている状態では、仰向けでも横向きでも鼻血は喉の方へ流れ続けます。
鼻血の対処でよくある間違い5-首の後ろをたたく
なぜ首の後ろをたたくという方法が広まっているのか、その理由はよくわかりません。
これは、首の後ろのツボを刺激して鼻血を止める方法もあるので、おおざっぱに「たたく」という行為だけが伝わったものでしょうか。
首の後ろをたたくと、その振動でかたまりかけた血が動いてしまい鼻血がとまりにくくなります。また、たたく刺激で血流が増すと鼻血がとまりにくくなるのでやめましょう。
ちなみに、鼻血を止めるツボは、首の後ろの「天柱(てんちゅう)」「瘂門(あもん)」「大椎(だいつい)」と手の「合谷(ごうこく)」だといわれています。
出典:これで改善!天柱(てんちゅう)は頭痛と肩こりに効く頭のツボ♪
鼻血の対処で冷やすのはどうなの?
一般的な止血の方法に「冷やす」というのがあります。では、鼻血の場合は、どこを冷やしたらよいのでしょう?鼻の周囲を直接冷やすか、首の前面(頸動脈)を冷やすと、傷ついた血管を収縮させて出血を少なくできる可能性があります。
しかし、正しい止め方をしていれば、冷やす物を準備している間に鼻血は止まります。
冷やすよりも、15分間しっかりと見守ることの方が大事ですね。
鼻血ですぐに病院を受診するのはこんな場合
はじめに15分間正しい鼻血の止め方をしてから、つまんだ手を離して鼻血が止まっているかどうかを確認します。そこで鼻血がもう出てこなければ大丈夫。
それでも、まだ鼻血が続いている場合は、正しい止め方をもう一度くり返します。
子供などで、15分間じっとしていられないような場合は、5~10分間可能な限りやってみましょう。時間が短い場合には3~4回繰り返します。
それで鼻血が止まらない場合には、すぐに病院へ行きましょう。受診するのは耳鼻咽喉科です。
短時間に洗面器一杯もの鼻血が一気に出るような場合は、救急車を呼びましょう。
また、鼻血が止まってもずっと具合が悪いときや、顔色や唇の色が白っぽくなっていたら、早めに病院へ行きましょう。子供の場合は小児科、大人の場合は内科を受診します。
鼻血の後に起こる症状
ほとんどの鼻血は、数分で止まってしまいます。
ところが、鼻血は止まったのに別な症状が出る場合があります。吐き気や血便(真っ黒い便)は、特に問題ないのですが、打撲などで脳へのダメージが強く疑われる場合には、すぐに脳神経外科を受診しましょう。
鼻血の後の吐き気や嘔吐
鼻血を大量に飲み込んでしまうと、吐き気が出ることがあります。
これは、血液が胃に入った場合によく起こる症状です。病的なものではありませんので、水分を多めにとって様子をみましょう。できれば、鼻血は飲み込まずに口から吐き出すように気をつけてください。吐き気だけでなく、実際に数回吐いてしまっても心配ありません。吐き終わってスッキリしていれば大丈夫です。
鼻血の後の血便
また、翌日などに黒い血便が出ることがあります。これは、飲み込んだ鼻血が消化液で黒くなって混ざっているためです。見た目は消化管(胃腸)からの出血の場合と同じですが、数日以内におさまるので様子を見てください。黒い便が混ざらなくなっていれば大丈夫です。
鼻血が血液から薄いサラサラした液に変わった場合
真っ赤な血が出ている場合は、単なる鼻血なので問題のない場合がほとんどです。
ただし、頭を強く打った後の鼻血が水っぽく薄まってきたら急いで脳神経外科を受診しましょう。
このような薄まった鼻血の他に、突然吐く、けいれんする、反応が鈍い、意識がないなどの症状があれば、すぐに救急車を呼んでください。
耳鼻咽喉科で行う鼻血の治療
鼻血については、耳鼻咽喉科で相談してみるのが一番です。
鼻血が止まらなくて受診する以外にも、アレルギー性鼻炎の治療などで鼻血が出にくくする予防処置も受けられます。いずれも、保険診療なので安心です。
鼻血の出血部位を圧迫止血する
耳鼻咽喉科で鼻血を止める治療は、まず圧迫止血を行います。鼻のつまみ方が間違っていて鼻血が止まらない場合が多いからです。出血の部位が鼻の奥の方であれば、医療用の詰め物を使います。
硝酸銀を塗る
綿棒で硝酸銀(しょうさんぎん)という液体の薬を鼻の粘膜に塗ります。ピリピリとした刺激感がありますが、じきにおさまるので大丈夫です。
レーザー治療
鼻の粘膜に表面麻酔をしてから、レーザーで鼻血の出やすい部分の粘膜を焼灼(しょうしゃく:焼く)します。
止血処置として行う場合もありますが、何度も鼻血を繰り返す場合の予防処置として行われることが多いでしょう。保険診療で治療を受けられます。
この図は、アレルギー性鼻炎の治療として行うレーザー治療ですが、鼻血で出血している部位に応じて、同じ処置になります。
鼻血の原因になっている病気の治療
耳鼻咽喉科で行う鼻血の治療は、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などの治療が主になります。鼻血予防のために鼻に塗る軟膏も、病院で処方してもらえます。
鼻中隔弯曲症(びちゅうかくわんきょくしょう)や鼻茸(はなたけ)などが鼻血の原因になっている場合には、手術が必要なこともあります。
下記のような鼻血の原因になる内科的な病気の場合は、それぞれの専門科で診てもらいましょう。
鼻血が出る原因と予防法
鼻血の約90%は、特に病的な原因がないといわれていますが、中には全身的な病気が隠れている場合もあるので、気になる時にはきちんと病院で調べてもらいましょう。
鼻血はキーゼルバッハと呼ばれる部位から出ることがほとんどで、この場合には心配はありません。
鼻の中は、丸い空洞ではありません。上鼻甲介(じょうびこうかい)、中鼻甲介(ちゅうびこうかい)、下鼻甲介(かびこうかい)という3つのヒダが縦に並んでいます。
鼻の中は、上の写真のように縦長の洞窟(どうくつ)状になっています。この鼻甲介が腫れて奥の方から出血することもあります。
鼻中隔(びちゅうかく)の弯曲(わんきょく)が著しい場合にも、鼻血が出やすくなることがあります。
特に問題がない鼻血の原因
鼻血は、鼻の中の粘膜に傷がついて出血する場合がほとんどです。
- 指などで刺激して傷がつく
- 空気が乾燥していて鼻の粘膜も乾燥しもろくなっている
- かさぶた(こびりついた鼻くそ)を無理にはがす
- 強く鼻をかむ
- くしゃみなどが勢いよく出る
自分でできる鼻血の予防法
鼻の粘膜を直接刺激しないことが大切です。
- 強く鼻をかまない
- 鼻に指を入れない
- 爪を短くして先をヤスリで丸めておく
乾燥に対しては、しっかりと保湿対策が必要です。
- マスクを装着する
- 室内の湿度を適度に保つ
- 鼻の粘膜に市販のワセリンを塗る
ワセリンは保湿作用が高いので、鼻の粘膜を潤すだけでなく、固まった鼻くそを柔らかくふやかしてはがれやすくする効果もあります。
鼻血を出やすくする病気
何度も鼻血を繰り返す場合には、全身的な病気が隠れている場合があります。
また、鼻血の頻度は少なくても、なかなか鼻血が止まりにくい場合には、なんらかの病気を疑う必要があるでしょう。
<鼻の粘膜が腫れて鼻血が出やすくなる病気>
- 鼻風邪
- アレルギー性鼻炎(花粉症)
- 副鼻腔炎(蓄膿症)
- 鼻茸(はなたけ:ポリープのようなもの)
- 鼻中隔弯曲症(びちゅうかくわんきょくしょう)
<血管がもろくなって鼻血が出やすくなる病気>
- 高血圧
- 動脈硬化
- 脳梗塞、心筋梗塞
- 糖尿病
脳梗塞や心筋梗塞などで血液をサラサラにする薬(抗凝固剤)を飲んでいると、更に鼻血が出やすくなっています。ワーファリン、小児用バファリンなどの飲み薬があります。
<血が固まりにくくなる病気>
- 血友病
- 白血病
- 突発性血小板減少性紫斑病
- 肝硬変
- 腎臓病
<癌など悪性腫瘍による鼻血>
- 上顎癌(じょうがくがん:上あごにできる癌)
- 上咽頭癌(じょういんとうがん)
<外傷による鼻血>
- 頭部打撲(とうぶだぼく:頭を強くぶつける)
- 頭蓋骨骨折(ずがいこつこっせつ)
- 鼻を強くぶつける
<その他の病気>
- 上咽頭線維腫(じょういんとうせんいしゅ)
これは、思春期の男の子に多い良性腫瘍です。原因はよくわかっていませんが、成長の過程でホルモンが影響していると考えられています。自然に治る場合もありますが、症状によっては手術で取り除く必要があるでしょう。
その他の鼻血の原因
特別な病気がなくて鼻を直接刺激しないのに、鼻血が出る場合があります。
- 熱いお風呂や温泉に入る
- 長湯をしてのぼせる
- 激しい運動
- 極度に興奮する
- 刺激物の摂り過ぎ
このような場合には、その原因となる行為をやめましょう。
また、アルコールや喫煙も、鼻血を出やすくする要因のひとつだと言われています。
まとめ
いつでも誰でも起こりうる鼻血。
早く上手に鼻血を止めるには、正しい止め方をすることが大切です。
- 落ち着く
- 下を向いて鼻をつまむ
- 15分間じっとしている
- 鼻血はなるべく飲み込まない
これで、鼻血が止まらなければ病院へ行きましょう。
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参考リンク
「メディカルiタウン」全国の病院検索、薬局検索、症状チェック&病気、処方薬、市販薬に関する医療総合サイト