子どもの熱中症に注意!わかりやすい4K対策とチェックリスト

小学1年生の男子生徒が、校外学習から戻って容態が急変し、救急車で搬送されましたが病院で死亡したという悲しいできごとがありました。
正しい知識、的確な判断、迅速な行動が、子どもの命を救います。
子どもの熱中症の予防と対応策、しっかり理解しておきましょう。
目次
熱中症の応急処置
子どもがいつもと比べて元気がなかったり、ぐったりしていたら熱中症を疑いましょう。
涼しい場所で体を冷やしながら休ませ、水分と塩分を補給し安静にして様子をみます。
自力で水も飲めない状況なら、すぐに病院を受診してください。
熱中症の重症度と手当

熱中症の重症度判断と必要な対処法について
重症度Ⅰで、適切な処置をして症状が改善されたら帰宅させてもよいでしょう。
水分と塩分の補給をして、体を冷やしながら10~20分間様子を見ても症状が改善しない場合や、症状が悪化してきたら、すぐに病院へ連れて行きましょう。
- 初期症状:具合が悪い、こむらがえりが起こる、手足のしびれ、めまい、立ちくらみ、ふらふらする
- 症状の悪化:強い頭痛、吐き気・おう吐、「疲れた」「だるい」「お腹が痛い」、ぐったりしている
- 重症化:意識がない、反応がない、座っていられない、全身のケイレン、唇が紫色、体温が高い
熱中症の応急処置は、効果的に「冷やす」ことが重要!
画像引用元:「熱中症の対策」|薬と健康の情報局
一般的な熱中症の対処法は、水分と塩分の補給がよく知られています。
しかし今回の例のように、すでに水を飲める状況ではなかった場合、重要なのは急いで体を冷やし体温を下げることです。
心肺停止が確認されたらAEDも必要ですが、意識はなくても心臓が動いて呼吸できているなら、救急車を待つ間に一刻も早く体を冷やすことを優先しましょう。
- 可能であれば、冷房の効いた部屋へ移動する(戸外であれば日陰へ移動、または車内)
- 靴を脱がせ衣服をゆるめて濡れたタオルで皮膚に水分を与えるか霧吹きなどで体を濡らす
- 扇風機やうちわで風を送り水分を蒸発させ、気化熱を奪って体温を下げる
- 首、脇の下、鼠蹊部(そけいぶ:足の付け根)に氷のうなどを当てる(氷がなければ自動販売機のペットボトルでもよい、濡れタオルでもよい)
特に注意するのは、汗を拭く時に乾いたタオルなどを絶対に使わないこと。
必ず濡れたタオルを使用してください。
皮膚が湿った状態を保たなければ、体を効果的に冷やすことはできません。
氷や保冷材がなければ、濡れタオルを首に巻くだけでもよいです。
室内・屋外にかかわらず、衣服をゆるめて靴も必ず脱がせることをお忘れなく。
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救急車の要請に関して
学校で救急車を養成する場合の基準・手順が定められているでしょうか。
一番の問題は、保護者の同意です。
命にかかわる不測の事態が生じた場合は、救急車の要請の直後に、あるいは同時に保護者へ連絡することになります。
もし「先に保護者の許可を得る」という規定が存在するなら、子どもの命を救う事はできません。
熱中症に限らず怪我や事故も起こり得るので、学校の方針を説明して学校側の判断に任せてもらう体制を整えましょう。
救急車が必要だという判断は、いつ誰が決定するのかということも明確にしておく必要があります。
- 学校の最高責任者
- 養護教諭
- 担任または他の教諭(発見者、対応者)
3者の合意が必要なのか、担任が自分のスマホで119番通報してよいのか。
アレルギー性ショックなどの場合は、保健室へ運んだり誰かを呼んで待っている余裕はありません。
とっさの判断が遅れることで、救命できる可能性がどんどん減ってゆきます。
効果的な冷却に必要な物品
保冷材や氷など、学校で管理する物品を決めましょう。
設置場所を決めて、管理方法も考えなければなりません。
- すべての教室に配置する
- 各棟の各階1ヵ所に配置する
- 保健室に配置する
- 職員室に配置する
そして、保冷材、氷ともに冷凍庫が必要です。
1ヵ所で凍らせて、クーラーボックス等で配置する運用方法もあります。
クーラーボックスは、据置型の物と校外活動の際に運搬するものが必要です。
据置・運搬に兼用できる機能のものがよいでしょう。
その際は、毎日冷凍庫に出し入れしなければなりません。
経口補水液は保健室で冷蔵庫に保存するだけにするのか、保冷材等と一緒に配置するのかを決めておきましょう。
タオル、うちわなどは、各教室に配置が可能でしょう。
熱中症の「4K処置」は、FIREよりも、わかりやすくて覚えやすい
熱中症の応急処置「FIRE」(ファイアー)という標語がありますが、ご存じでしょうか。
- F:Fluid 水分補給
- I:Icing 冷却
- R:Rest 休憩
- E:Emergency 119番通報
参考)朝日新聞デジタル「熱中症(6)応急処置はFIRE,夏イベント無理せずに」
わたしがパッと見てすぐにわかるのは「I」と「E」くらいですね。
それよりも「4K処置」の方が、誰でも覚えやすくて理解できると思います。
- K:休憩=涼しい場所へ移動して休む
- K:給水=水分と塩分を補給する
- K:急所を冷やす(首を冷やすでもよい)
- K:救急車
「休憩・給水・急所を冷やす・救急車」いかがでしょうか。
熱中症の観察ポイントは脱水症状
子どもがなんとなく動きが静かでおとなしく、元気がない場合はイエローカード。
子どもは大人のように、簡単に体調不良を訴えてはくれません。
「疲れた」「だるい」という言葉は、すでに病院を受診するレベルの赤信号です。
急に暑くなったり猛暑・酷暑が続いていたら、子どもの脱水症状に注意しましょう。
子どもの脱水症状の見分け方
- 汗や涙が出ない
- 喉の渇き
- 皮膚や粘膜の乾燥
- 尿量の減少
- 機嫌が悪い、元気がない
脱水になる前は大量の汗をかきますが、体の水分が足りなくなってくると、汗が出なくなります。
唾液も減るので、とても喉が渇きます。
唇がカサカサして、舌も乾燥してボソボソした感じやひび割れができてきます。
数時間排尿がなく、1回の尿量も減ってきます。
皮膚が乾燥して、目が落ちくぼんだり、お腹などにシワができて皮膚のハリがなくなります。
- 手の甲をつまんで、元に戻るのに3秒以上かかっていたら脱水です
- 親指の爪を押すと一瞬白くなりますが、赤みが戻るのに3秒以上かかっている場合も脱水を疑います
熱中症予防のチェックリスト
熱中症の重症化を食い止めるには、予防と早期発見が必要です。
早期発見には、正しい知識を持って子どもたち1人ひとりをしっかり観察することが不可欠です。
熱中症予防のチェックリスト
- □朝食をきちんと食べてきたか⇒十分な水分補給が必要
- □朝起きてから水分を摂っているか⇒少なければ水分補給
- □寝不足になっていないか⇒熱中症になりやすい
- □朝起きてから排尿しているか⇒尿の減少は脱水のサイン
- □風邪や下痢などの症状がないか⇒脱水になりやすい体調なので要注意
- □日除けの帽子をかぶってきたか⇒直射日光を遮り涼しい衣服でいること
- □水分補給用の飲料水を持参しているか(本人または学校など)
- □運動や屋外活動の前後に体調を確認したか
- □運動や屋外活動の前後に十分水分を摂らせたか⇒喉が渇いていなくても水分補給する
- □運動や屋外活動の途中で休憩や水分補給を計画、実行したか
- □汗を拭く濡れタオル、またはタオルを濡らす水が準備されているか⇒乾いたタオルは厳禁
- □暑さ指数:WBGTを確認したか⇒スケジュールの変更や中止を判断する
朝食を食べないことは、熱中症や脱水を起こしやすい大きな危険因子です。
自宅で水分を摂り、きちんと排尿しているかどうかも重要なチェックポイントになります。
脱水のサインは、1回の尿量が減る、排尿の間隔が長くなる(回数が減る)、尿の色が濃くなる、など排尿の観察で早期に把握することができます。
ただし、子ども達の羞恥心などに配慮が必要です。
保護者から情報を得る手段もあればよいでしょう。
<暑さ指数:WBGTの活用>
「暑さ指数を毎日確認する」というマニュアルでは、不十分です。
- 「いつ」:毎日(○月〇日~○月〇日までの期間)、朝礼、ミーティング、昼休み、何時に
- 「誰が」:実施者の役割分担
- 「どこで」:熱中症指数計を使って測定する場所(校内のどこ、屋外のどこ)
- 「何を」:環境省熱中症予防情報サイト
- 日本気象協会|熱中症情報
- 熱中症予防情報|国立環境研究所
- 熱中症警戒計(アップストア無料アプリ)
- 熱中症指数計
- 「どうする」:データを調べる、測定する、結果を報告する、結果を記録する、結果を伝達(周知・掲示)する
ここまで具体的に行動内容を明確にしておかなければ、結局は誰も何もやらないという事態も起こり得るのです。
集団生活における運営側のチェックポイント
画像出典:環境省|「熱中症 環境保健マニュアル200158」
- 熱中症予防の責任者を決める
- 熱中症予防の監督者を配置する
- すぐに利用できる休憩場所の確保
- こまめに休憩を取れるスケジュール作り
- いつでも飲める冷たい飲料を準備する
- 体力や体調に合わせたペースを守るよう指導する
- 気軽に体調を相談できる雰囲気を作る
- 体調不良は我慢せずにすぐに申告するよう指導する
- 生徒同士が互いに体調を気遣い声を掛け合うよう指導する
管理指導責任者が、熱中症の正しい知識を持って対応することが重要です。
観察と状況判断、適切な対処をすみやかに行える管理者が同行し、休憩所や冷たい飲料の設置など環境を整えることが必要です。
屋外活動では、歩かせずに車で移動できる対応も準備する必要があります。
冷房を効かせた車内で横になり、水分補給しながら保健室などへ移動しましょう。
<車の使用に関して>
車の活用がすすめられており、「涼しい場所」の確保と「安静」に関しては非常に効果的です。
しかし、学校等が車を使用する際には、様々なハードルがあります。
- 公用車(保有)の購入・維持・管理
- 市町村の公用車を借りれるか
- レンタカーの場合の費用
- 運転者・同乗者保険
- 保護者の理解と同意
部活動などの運動の前のチェック表
「学校安全web」というサイトで、PDFが公開されています。
様々なリーフレットなどもありますので、参考にしてください。
水分と塩分の補給
健康な状態での予防的な水分補給は、基本的に何を飲んでもかまいません。
大人の場合は、アルコールやコーヒーなど利尿作用のある飲み物が脱水を増強させるのでよくありませんが、子ども達がそれらを引用することはまずないでしょう。
脱水状態になりつつある時や、すでに脱水になってしまったら、経口補水液が有効です。
水分と塩分のバランスが整えられているので、素早く吸収されて脱水を改善してくれます。
<豆知識:経口補水液の不思議>
普段の元気な時に経口補水液を飲むと、マズくて飲めないことがあります。
これは、体が水分・塩分の補給を必要としていないサイン。
逆に、脱水に傾いていて水分・塩分の補給を体が求めている時には、経口補水液が美味しく感じられてグビグビ飲めるようになります。
喉が渇いていなくても、定期的に水分補給が必要
熱中症の予防には水分・塩分補給が大切ですが、喉が渇いて水が欲しくなってからでは遅すぎます。
特に子どもの場合、すすんで水を飲まないことが多いので、きちんと声掛けしたり水を飲む環境を整えることが重要です。
幼稚園や保育所、学校など、水道水を飲める環境では、中休みまたは休み時間ごとに飲水を促します。
水道水を飲みたがらない子どもや屋外での活動時には、水筒などで飲料水を持参したり、学校側でもある程度準備する必要があるでしょう。
運動や屋外活動の場合は、途中に休憩を取り水分補給をします。
熱中症対策としては、なるべく冷たいものを飲むようにすると、体の内側を冷やす効果があります。
特に5~15℃の冷水は、熱中症予防に効果が高いといわれています。
しかし、学校等には生徒全員の飲み物を入れておく冷蔵庫はありませんね。
ウォーターサーバーも、費用の問題があります。
保冷効果が高く、軽くて負担にならない水筒を各自が使用して欲しいところです。
冷水、氷、保冷材、アイスパックなどの持ち運びに便利です。楽ちんキャスター付きのクーラーボックス。
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水分補給のタイミングと飲む量
脱水予防のための水分摂取は、一度に大量の水分を摂るのではなく、適量~少量をこまめに飲むことが大切です。
目安としては、1回に100ml程度、回数は1日に8~10回程度です。
一気に飲んだ水分は、体内を素通りしてほとんど排尿でなくなってしまうからです。
子どもに必要な水分量は、年齢と体重で異なります。
- 幼児(1~7歳):80~100ml/kg/日
- 学童(7~12歳):60~80ml/kg/日
- 成人(13歳以上):50ml/kg/日
学校で3~5回ほど水を飲むことになります。
自宅から飲料水を持参する場合は、300~500mlくらい必要です。
2014年(H26年)の平均体重は次のようになっています。
- 7歳:男子23.73kg 女子23.26kg
- 13歳:男子48.36kg 女子46.63kg
- 17歳:男子62.07kg 女子51.90kg
参考)平均体重.com
1日に必要な水分量を計算すると、次のようになります。
- 7歳:男子1423.8ml~1898.4ml 女子1395.6ml~1860.8ml
- 13歳:男子2418ml 女子2331.5ml
- 17歳:男子3103.5ml 女子2595ml
上の図で考えると、1日の必要水分量が2300mlの人は、代謝水と食事で800mlの水分があるので、水として飲まなければならない量は1500mlとなります。
1500mlを8回に分けて飲む場合は、1回の平均がおよそ200mlになりますね。
これには「汗」が含まれていないため、発汗の量に応じて水分の喪失量が増えるので、その分補給量も増えることになります。
また、体温が1℃上がると、不感蒸泄(皮膚からの蒸発、呼気に含まれる水分)が15%上がるので、ますます不足量が増えます。
7歳の必要摂取カロリーは約1500kcalで、食事から摂る水分量は600mlになります。(1000kcalで水分400mlに換算)
必要水分量を1800mlと考えると、代謝水200ml+食事水分600mlを引いて1000ml以上の水を飲まなければなりません。
1000mlを8回に分けると、1回の水の量は125mlとなります。10回なら100mlです。
飲水のタイミングは、次のような目安で考えましょう。
- 起床時
- 食事やおやつの時(3~5回)
- 入浴の前後(2回)
- 寝る前
食事は3食規則的に食べることが、熱中症を予防する大切なポイントになります。
起床時、入浴前後、就寝時の他に、食事と食事の間(10:00、15:00)くらいに水分を摂取するとよいでしょう。
入浴後はたくさん飲んで、寝る前を50ml程度に抑えたり、1回の飲水量は自由に増減してかまいません。
十分な水分摂取は、脳梗塞や心筋梗塞の予防にもなります。
熱中症だと思っていたら実は脳梗塞で、発見と治療が遅れて一命はとりとめたものの、重度の後遺症が残ってしまった例もあります。
炎天下の屋外での活動や運動をする時には、30分ごとに2~3口の水分摂取が必要です。
「喉が渇いた」「水を飲みたい」と感じた時点で、すでに脱水傾向になっています。
遠慮なく自由に水を飲める環境と、学校等では声掛けや配慮が必要です。
暑さ指数:WBGTと気温に注意する
「暑さ指数」は、熱中症の原因となる暑さの3つの要素と気流を総合的に考慮した「指数」です。「湿球黒球温度」ともいいます。
空気中の湿度が高いほど、皮膚の汗が乾燥しにくくなって気化熱を有効に利用できなくなります。
ドライサウナは湿度が低いので80~90℃の高温でも耐えられますが、ヤカンの湯気なら一瞬でヤケドをしてしまいますね。
これは、湿度が多いと熱が伝わりやすくなるためです。
同じ気温でも、湿度の低い北海道ではカラッと快適でも、湿度の高い地域では蒸し暑く不快に感じるのと一緒です。
湿度が高いほど、気温の熱が体に与えるダメージは大きくなります。
暑さ指数に応じた判断基準
- 暑さ指数:31℃以上 「運動は原則禁止」*参考気温:35℃以上
- 暑さ指数:28~31℃以上 「厳重警戒」*参考気温:31~35℃
- 暑さ指数:25~28℃ 「警戒」*参考気温:28~31℃
- 暑さ指数:21~25℃ 「注意」*参考気温:28℃未満
「暑さ指数」31℃以上は「危険」に区分されており、外出は避けて「運動は原則禁止」となっています。
様々な行事やカリキュラムは、この「暑さ指数」をもとに安全を確保し、中止の判断も必要になってきます。
参考:環境省|熱中症予防情報サイト|「暑さ指数(WBGT)の詳しい説明」
熱中症メーターの活用
熱中症計、熱中症指数モニターなど、携帯または据置型の小型計器が多数販売されています。
子ども達が生活、活動する場所には適宜配置して参考にしましょう。
熱中症指数/WBGTが表示される信頼できる熱中症指数系の最新モデルです(2018年7月現在)
家庭用の簡易版は、こちら。熱中症の危険度を4段階で表示します。
温湿度計だけでは、熱中症の危険度を判断するには不十分なので注意しましょう。
まとめ
子どもの熱中症は、日ごろから予防に努めることが大切です。
注意していても熱中症になりやすいのが子どもの特徴。
少しでも普段と様子が違う時や脱水の兆候が見られたら、急いで涼しい所へ移動して体を冷やすことが重要です。
そして、水分と塩分を補給します。
ぐったりしている時や、水も飲めない場合には、急いで病院へ行きましょう。
意識がなくなったり、顔色や唇の色が悪くなったら、すぐに救急車を呼びましょう。
あなたの知識と的確な判断、迅速な行動が確実に子どもの命を救います。
「4K処置」覚えていますか?
休憩・給水・急所(首)を冷やす・救急車