【蜂窩織炎:ほうかしきえん】原因・症状・治療を看護師がわかりやすく解説
2018/03/12

「蜂窩織炎」(ほうかしきえん)は、こじらせると非常に厄介です。
意外と身近な病気なのですが、あなたはどこまで正しい知識を持っていますか?
大事なことは「早期治療」です。自覚症状があったら放置せずに、できるだけ早く病院を受診しましょう。
自己判断で油断せずに、少しでも不安な時には必ず医師に相談してください。
目次
蜂窩織炎(ほうかしきえん)って、どんな病気?
蜂窩織炎は、皮膚の下から奥深い皮下組織まで炎症が及ぶ細菌感染症です。人にうつる心配はありません。
毛穴や虫刺され、傷などから細菌が侵入して化膿性の炎症を起こします。
そのため、赤く腫れて熱感(触ると熱い)があり、圧痛(押すと痛い)があります。
皮膚の周囲とはっきりとした境界がないことが特徴です。(なだらかに盛り上がっていて段差が少ない)
出典:蜂窩織炎のその後
ただし、顔や上肢などにできる丹毒は表在性(真皮のみの浅い範囲)の蜂窩織炎で、リンパ管がダメージを受けて皮膚が硬くなりオレンジの皮のようなゴツゴツした感じになります。これは、健康な皮膚との境界がはっきりと分かれており、足などにできる蜂窩織炎とは異なる特徴です。
蜂窩織炎の「蜂窩」は昆虫の「ハチの巣」です。炎症が起きている組織を顕微鏡で見ると、ハチの巣のような形に見えることから名付けられました。
何科を受診すればいいの?
一般的には、皮膚科が推奨されています。
しかし、場合によっては外科的な処置や入院が必要な事もあります。できれば個人のクリニックよりも、総合病院などの皮膚科を受診した方がよいでしょう。
外科や整形外科でも、正しい診断と治療を受けられます。内科や小児科でも、同様に検査・診断、治療を受けることができます。
「どの科にかかろうか?」と悩むよりも、まずはすぐに行ける病院を受診することが重要です。
治療開始が早いほど、悪化を防いで早く治すことができます。
蜂窩織炎の原因
蜂窩織炎は皮膚の感染症ですが、原因となる細菌はほとんどが溶連菌(溶血性連鎖球菌)と黄色ブドウ球菌の2つです。
黄色ブドウ球菌は、常在菌といって誰でも体のどこかに持っている細菌です。
これらの細菌は、健康な皮膚では発症しません。普段は、皮膚のバリア機能がガードしているからです。
- 虫刺され
- すり傷
- アトピー性皮膚炎
- とびひ(伝染性膿痂疹)
- 水虫(白癬)
- リンパ浮腫
健康な皮膚が、上記のような状態になってバリア機能が失われると、蜂窩織炎を起こしやすくなります。
また、皮膚に異常がない場合でも、毛穴などから細菌が侵入して蜂窩織炎になる場合もあります。
症状と診断
蜂窩織炎の症状
蜂窩織炎は、局所の症状に大きな特徴があります。
- 皮膚が赤くなる
- 腫れる
- 熱感がある(触ると熱い)
- 触ると痛い(局所の圧痛)
その他に、次のような全身症状が出ることもあります。
- 発熱
- 悪寒戦慄(寒気とふるえ)
- 関節痛
- 倦怠感(だるさ)
蜂窩織炎の診断
蜂窩織炎と似たような他の病気の可能性を考えて、必要な検査が変ってきます。
受診した病院や科によっても、検査の内容が変わります。
1.医師による病歴の聴取
一般的には、局所の視診・触診、問診などが基本となります。
2.血液検査
炎症を示す数値が高くなっていますが、それだけでは診断の決め手にはならない場合があります。(白血球、CRPなど)
尿酸値も確認すれば、痛風との鑑別診断ができます。(尿酸値が正常なら痛風の可能性は低い)
3.その他の検査
整形外科を受診した場合には、レントゲンやCTなどで骨に石灰沈着などがないかどうかを調べて、痛風かどうかを判断する場合があります。
超音波検査(エコー)を行う場合もあります。
症状に応じて必要な検査を医師が判断して行うので、病状によって必要な検査が異なります。
治療方法
抗菌薬による治療
蜂窩織炎の原因が細菌なので、抗菌薬での治療が有効です。
飲み薬、または点滴などで治療できます。
入院が必要となる場合
一般的には通院でじゅうぶん治療が可能です。
しかし、全身状態がよくなかったり重症の場合には、安静と治療のために入院が必要となります。
- 高熱が続く
- グッタリしていて日常生活に支障がある
- 急激に悪化している
- もともと持病などがあり感染が重症化するおそれがある
- 飲み薬だけではなかなか回復しない場合
- 症状が重く安静が必要な場合
また、糖尿病や免疫不全などの病気があると重症化しやすいので、早期から入院治療を行う場合もあります。
治療期間の目安
通常は5~14日間の抗菌剤の内服です。
- 炎症の強さ
- 治療開始のタイミング(できるだけ早い方がよい)
- 原因菌の種類
- 個人の免疫力
- 回復力
上記のような条件によって治療期間は変わります。内服だけで十分か、外来で点滴を併用するか、入院して安静を確保し点滴を管理するかなども状態によって変わります。
場合によっては、長期(1ヵ月~)の服薬が必要なこともあります。
注意してほしいことは、けっして自己判断で薬を中止しないこと。
局所の症状がおさまっても、体の中にはまだ細菌が生き残っています。完治するまでは、しっかりと指示された期間薬を飲み続けましょう。
家庭でのケア
- 安静
- 赤みと熱感は冷やす
- 足を高くする
- 浮腫がある場合は弾性包帯の使用
炎症を悪化させないためには、安静が必要です。
赤く熱感がある場合は、冷やします。入浴も控えて、シャワーなどで済ませましょう。
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患部が膝から下の場合は、なるべく足を下げないようにしましょう。夜寝る時は、足が高くなるようにクッションなどで調整します。
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日中活動する場合は、足をのばして座るか横になるなどの休憩を取りましょう。座っていても、足を下げた姿勢を長時間続けないで適宜休むようにしましょう。
浮腫がある場合には弾性包帯を使用しますが、これは病院で指導を受けてください。自己流でやるのは危険です。
市販の弾性ストッキングなどを使用する時は、腫れている部分の皮膚を傷つけないように、慎重に着脱してください。
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再発と予防
蜂窩織炎が再発することは、一般的には少ないと言われています。
しかし、1年以内の再発率が8~20%あるので、一部の方は再発していることになります。
再発を予防するには、最初に発症した時にしっかりと治療することが重要です。
蜂窩織炎を予防するには、まず皮膚の清潔を保つことが一番。
特に、手の指を念入りに洗う習慣をつけてください。場合によっては、手指消毒剤も使いましょう。
次に、皮膚の病気や傷はきちんと治すこと。
壊死性筋膜炎(えしせいきんまくえん)
皮膚の壊死性感染症のひとつで、筋肉の表面(筋膜)に沿って急激に炎症が広がる病気です。
溶連菌やその他の複数の細菌が感染して重症化した蜂窩織炎のことをいいます。
これは、蜂窩織炎に比べて明らかに進行が早く(分単位で悪化する)、全身的な症状が強く現れて死に至る病気です。普通に生活できる状態であれば、心配しなくても大丈夫です。
- 水疱
- 紫斑
- 血斑(赤い水疱:水疱の中身が血)
- みるみるうちに広がる炎症(病院では30分おきに印を付けて観察します)
- 発赤の範囲を超えた周囲の正常な皮膚にも強い圧痛がある
- 紫斑部の痛覚の消失
- ショック症状(呼吸速迫、頻脈、血圧低下)
これらの特徴で診断の予測がつくので、あとは迅速病理組織検査で確定診断となります。
壊死した部分は緊急手術で取り除きます。
蜂窩織炎と似ている病気
蜂窩織炎のように赤く腫れる炎症を起こす病気が、他にもたくさんあります。
落ち着いて観察すると違いがあるので、慌てないことが大切です。
昆虫咬傷(過敏反応)
昆虫に刺された部位の過敏反応で、赤く腫れている場合には、次のような特徴があります。
- 刺された跡がある
- 痒みがある
- 発熱などの全身症状や重篤感(重症感)がない:局所の症状のみ
- 白血球は増加しない
痛風発作
痛風発作と誤診されることがあるので注意が必要です。
- 足の関節が赤く腫れる
- 関節痛
- 繰り返す発作(寛解期と発作を2回以上繰り返す)
- 血清尿酸値が高い
痛風と誤診されてしまった場合には、炎症を悪化させる治療(揉む、温めるなど)をされてしまうので、変だなと思ったら病院を変えることも必要です。
深部静脈血栓
静脈の中に血栓ができて血液の流れが悪くなり、足首などに浮腫を起こします。流れの悪い場所が脚の上の方にできると、足首だけでなく足全体に浮腫が広がります。
足首の浮腫は、はじめ皮膚が荒れて痒くなり、血液の成分がしみ出して赤茶色に変色します。
静脈瘤を併発すると、立ったり歩いたりした時に痛みが出るようになります。
放置すると肺塞塞栓症で命を起こすこともあるので、抗凝固剤の服用などで治療します。
家族性地中海熱に伴う蜂窩織炎様の紅斑
中近東のスペイン・ポルトガル系ユダヤ人に起こる遺伝性疾患です。繰り返す熱と急性腹痛を伴う。
日本人は心配いりません。
壊疽性濃皮症
原因は不明ですが、全身性の疾患に合併して起こる病気です。
(白血病、ベーチェット病、腸の炎症性疾患、C型肝炎、リンパ腫、SLE(全身性エリテマトーデス)、サルコイドーシス など)
盛り上がった赤い炎症性の発疹、膿疱や結節(しこり)が出来て、やがて潰瘍となり壊死して腫れが広がって行きます。
発熱や倦怠感(だるさ)などが、よくみられます。
Sweet症候群
白血病や骨髄異形成症候群になどに合併する病気。
発熱とともに、主に顔や首などにニキビ様の丘疹ができ、水疱や膿疱だできてくる。
急性で圧痛(押すと痛い)があり、顔にできた場合は、丹毒や眼窩周囲蜂窩織炎に似ている。
川崎病
血管炎の一種で、1~8歳の小児と乳児に発症しやすい病気です。
発熱、結膜炎、急性の頸部リンパ節腫脹(腫れ)、口腔咽頭発赤(口の中や喉の赤み)、手掌(手のひら)や足底皮膚炎があります。
顔に症状が出た場合は、眼窩周囲蜂窩織炎に似ています。
類丹毒
病名が丹毒ですが「類」がついているので、別の病気です。
別名「豚丹毒」ともいい、豚丹毒菌に感染して発症します。
魚類、甲殻類、家禽または食肉を扱う職業に従事する人に限定して発症する病気です。
軽傷では感染した部位が赤く腫れるので、蜂窩織炎に似ています。
重症化すると発熱や全身性の感染症となります。
参考:人喰いバクテリア(劇症型溶血性レンサ球菌感染症)
蜂窩織炎の原因である溶連菌による感染症の中には「人喰いバクテリア」と呼ばれる劇症型溶血性レンサ球菌感染症があります。
「劇症型」というのは、症状が劇的に急激に進んで悪化し死に至る病気のことをいいます。原因は溶連菌に限りません。
「劇症肝炎」は、原因が肝炎ウィルスですが、同じように数日単位で死亡してしまう病気です。
劇症型溶血レンサ球菌感染症は、日本では1992年に報告されており、毎年100~200人の患者が確認されています。
その中の約30%が死亡しており、極めて致死率が高いのでマスコミが「人喰いバクテリア」というショッキングな呼び名を付けました。
主な病原体は「A群溶血性レンサ球菌」ですが、特に30歳以上の大人に多く発症しています。
症状
免疫不全などの重症の疾患がない普通に健康な人でも、突然発症することがあります。
次のような初期症状から10時間以内に非常に急激に劇的に症状が悪化・進行します。
- 手足の痛み
- 腫れ
- 発熱
- 血圧低下
症状が進行すると、軟部組織壊死、急性腎不全、成人型呼吸急迫症候群(ARDS)、播種性血管内凝固症候群(DIC)、多臓器不全(MOF)を引き起こして、ショック状態から市に至ることが多くあります。
治療
ペニシリン系薬剤が治療の第一選択となります。組織内の菌密度が上昇すると、クリンダマイシンも推奨されています。さらに、免疫グログリン製剤の効果も報告されています。
低下した血圧を維持するために大量の輸液が必要ですが、輸液量が多過ぎると逆に危険なため、慎重な管理が必要です。
壊死した組織は溶連菌の生息地なため、急いで広範囲に壊死部分を切除しなければなりません。
まとめ
「蜂窩織炎」(ほうかしきえん)は、あまり聞き慣れない病名ですが、日常生活の中で特に心当たりがなくても自然になってしまう病気です。
たいしたことはないから、と油断して放置せずに早めに病院を受診することが大事です。